フィンランド参加者体験談 〜フィンランド教育視察体験記 - 自分の目で見て、学び、挑戦することの大切さ〜

Moi!こんにちは!🇫🇮ゆうとです!
私は大学で美術教育を専攻し、卒業後は大阪の公立小学校で6年間、教員として勤務しました。

校務分掌は、2020年のコロナ禍の時の採用から、ずっとICT教育を担当していました。
そして、2024年3月、フィンランド教育視察プログラム(GTP)10th に参加しました。

1. 参加したきっかけ

当時、私は英語力を高めることや、新しい経験を通して自分自身を成長させることを目標にしていました。一方で、学び続けるモチベーションを維持することに難しさも感じていました。

これまでにも海外を訪れたことはありましたが、観光を楽しむだけでは、その国の人々の暮らしや文化、歴史を深く理解することは難しいと感じていました。

「せっかく海外に行くなら、その国の生活や文化をもっと深く知りたい。」

そう考えるようになった頃、Instagramでこのプログラムの案内を見つけました。

2. 職員会議での一言「フィンランドは〜らしいよ?」

もう一つ、大きな参加理由となったのが、フィンランドの教育への関心です。

私は小学校教員として、初任からICT担当に携わっていました。2020年のコロナ禍で2年も前倒しされたGIGAスクール構想に翻弄されてきた一人です。一人一台端末の整備が進んでいましたが、現場では、端末をどのように授業に活用すれば効果的なのか、試行錯誤が続いていました。

そんな中、ある職員会議で、他の先生から、「北欧ではICT教育は使われなくなってきたらしいよ。」という声があがりました。

実際に確認すると、フィンランドなどの北欧諸国で、デジタル機器の利用を見直し、紙や鉛筆を重視する動きがあるというニュースが確かにありました。日本では北欧の教育が優れたモデルとして紹介されることも多かったため、「なぜそのような変化が起きているのだろう」と疑問に思いました。

しかし、情報源となる論文を調べてみると、デジタル機器そのものを否定しているわけではなく、個人端末を学校に持たせることを否定している内容や、学習内容や場面に応じて適切な方法を選ぶことを示唆していることが分かりました。

だからこそ、ニュースやインターネットの情報だけで判断するのではなく、実際に現地を訪れ、自分の目で確かめたいと思いました。

(当時、情報を得た新聞紙の記事 撮影:筆者)
引用:https://iwasawagakuin.com/教育はデジタルからアナログへ/読売新聞

また、英語を実際に使いながら、さまざまな人と交流できることも含めて、プログラムの活動は大きな魅力でした。

  • 『未知の環境で教育について学ぶこと』
  • 『自分自身の成長につながる英語環境』

その両方を期待し、参加を決めました。

3. 事前研修

フィンランドに出発する前のオンライン研修では、参加者の多様さに驚きました。

私は当初、参加者のほとんどが現役の教師や、将来教師を目指している大学生なのではないかと考えていました。しかし、実際には、教育だけでなく、フィンランドの文化や暮らし、海外での学びなど、さまざまなことに関心を持つ人たちが集まっていました。

最初は、
「めっちゃ難しいことをスラスラ喋ってる!」
「意識めっちゃ高い人らの集まりや…!」
「ついていけるかな?」
と心配しました。特に私は仕事の調整もあり、事前研修には1ヶ月ほど遅れての参加でした。

しかし、「成長するチャンスや!」と思い、年齢や職業、興味の異なる人たちと意見を交かせることに大きな期待も抱きました。

印象的だった学び

  • コンピテンシー(資質)の理解:フィンランド全体で子どもに育みたい資質が明文化されており、社会で生きる力を系統的に学ぶ仕組みになっています。「自分たちがどの経験からコンピテンシーを培ってきたか」を考える活動を通じて、日本教育との比較ができました。
  • 独特なグループワーク:「数字で表すと…」「もし〜だったら」といった視点でのアプローチがとても新鮮でした。

初めての欧州へ行く不安や寒さへの心配もありましたが、LINEグループで質問や豆知識を共有できたことで、大きな安心感につながりました。

(GTPの事前研修で扱ったコンピテンシーについて学ぶ資料 GTP事前研修資料より)

4. 現地研修

現地研修では、日本で得た情報だけでは分からないことを、自分の目で確かめたいと考えていました。

特に関心があったのは、「ICT機器と紙や鉛筆の使い分け」と、「子どもたちが学ぶ環境」です。

現地でのインタビューで「ICTを使うことに賛成か?」「家庭でどのくらいデジタル機器を使わせているか?」と質問すると、「便利だから活用するべきだけど、依存しないように親がコントロールしているよ」という、日本と似た見解が多く聞かれました。

(現地で行った街頭インタビューの様子)

目から鱗だった校長先生の言葉

ある学校で校長先生に「ICT担当の先生はどの方ですか?」とお伺いすると、次のような答えが返ってきました。

「ICTスキルは先生の基本的スキルだから、1人が担当するということはないよ。」

(現地の学校のICTの保管場所の様子)

担当者が勉強して他の先生に伝達・研修していくスタイルだった経験から、その言葉は大きな驚きでした。

先生たちの働き方と豊かな時間

教育制度だけでなく、その背景にある先生たちの思いや文化にも触れました。特に、先生に対するリスペクトがあり、過度なプレッシャーが比較的少ないと感じました。

その最たる事実は、フィンランド1日の24時間の過ごし方の割合が、

睡眠:仕事:余暇 = 8:8:8

ということです。

15時になると「今からうちの馬を走らせるの。じゃあね」と颯爽と帰っていく先生の背中が、とても眩しく見えたのは僕だけでしょうか・・・。また、学校の食堂が保護者にも開かれており、先生・生徒・保護者の距離が近いことも印象的でした。

教育を一つの正解だけで捉えるのではなく、その国の文化的背景や価値観によって学校や教師のあり方が違うことを知り、日本教育を改めて見つめ直す貴重な機会となりました。

(現地の学校の職員室の様子)

5. 授業実践

プログラムでは、参加者同士で協力しながら活動を準備し、実践することにも取り組みました。

私のグループは高校生1人、大学生2人、教員の私の計4人。「教師としての経験を生かせる!」と張り切っていましたが、初めて訪れる学校、初めて会う子どもたち、英語を使いながらの授業は正直かなり不安でした。

(授業づくりをともに行ったシベリウスチーム)

授業の構成案

試行錯誤の末、45分間に以下の要素を盛り込みました。

  1. 「世界のことわざカルタ」(世界は広いけど似たところもあると気づいてほしい)
  2. 「4コマ漫画づくり」(世界に知られている日本文化を体験してほしい)
  3. 「寸劇」(協力する体験をしてほしい)

しかし、直前の運営の方からの「(発達段階の視点から考えると)選択肢が多いことが心地よさに繋がらない時もある」というアドバイスや、現地のコインランドリーで地元の方となかなか英語が通じなかったという経験から、振り返りカードを「フィンランド語対応 + イラスト付きの視覚化」に急遽変更しました。

迎えた当日

担任の先生がフィンランド語で毎回丁寧に翻訳してくださり、授業はスムーズに進みました。「きゅうりのように冷静」ということわざを選んだ児童が、「クールな人は捕まっても、牢屋から脱出できるくらい冷静」というユニークなストーリーを描いてくれたり、校長先生が地域で劇をされていた影響もあり、子どもたちが積極的に劇をやりたいと言ってくれました。

(授業実践を担当したクラスで生徒が描いていたストーリー)

この経験から、さまざまな環境への授業スタイルの柔軟性や対応力が鍛えられ、学習者の背景によって授業のあり方が大きく変わることに気づかされました。

おわりに

このプログラムに参加して得たものは、フィンランドの教育についての知識だけではありませんでした。

日本に帰ってから、私は子どもたちに任せて、これまで以上に挑戦させてみようと思えるようになりました。教師として先回りしてしまうこともありますが、自分が慣れない環境で失敗しながらも周囲と協力した経験を通し、「失敗も大切な学びの一部なのだ」と実感しました。

「失敗しても大丈夫。また挑戦すればいい」と思えるような環境をつくりたい。そう考えられるようになったことは、私にとって大きな変化です。

海外の教育を学ぶことは、単に他の国の優れた方法を輸入することではありません。異なる環境や考え方に触れることで、自分自身の教育観を見つめ直し、目の前の子どもたちにとって何が大切なのかを考えることにつながります。何より、ニュースの表面を鵜呑みにせず、自分の目で確かめられたことが大きな自信になりました。

2024年のフィンランド教育視察プログラムは、教育について学ぶと同時に、自分自身も挑戦することの大切さを実感できた貴重な体験でした。

その後も、プログラムの仲間と交流する中で視野を広げ、公務員を退職し、現在はイギリスでワーキングホリデーとして日本人補習校で働いています。

さらに、サポートメンバーとしてこのプログラムに関わる中で、当時の自分が得た気づきを、もっと多くの人に感じてもらいたいと思っています。

(フィンランドの空に広がっていたオーロラとともに!)

最後まで読んでいただき、有難うございました。

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