GTPセブ参加者体験談 高津慎太郎 大学4年生〜「なんとなく心地いい感じ」を求めて〜

Global Teacher Program (略称GTP)in Cebu 9th batch 参加者の髙津慎太郎です。
信州大学教育学部の3年生だった2024年の春、コロナ禍の後としては最初のGTPに参加してきました。普段は総合的な学習やオルタナティブ教育について、興味をもって学んでいます。

そんな私が、セブでの時間を通してどんなことを感じたか、体験談に記してみました。
ちょっと立ち止まって、読んでもらえるとうれしいです。

1、なぜGTPへの参加を決めたのですか

①自分を作ってくれた、風越での出会い

私は長野県で生まれ育ちました。長野県にはすてきな実践をしている学校がたくさんあります。

その中の一つが、軽井沢風越学園です。
高校生の頃に風越の存在を知り、そこから、「探究」や「オルタナティブ」という言葉に興味をもつようになりました。

大学3年生の夏、風越で開かれるプログラムに参加しました。参加者の一人にGTPの過去参加者がいて、このプログラムに出会いました。偶然の出会いでしたが、必然のように感じられます。すぐに、無意識のうちにGTPに応募していました。

まだコロナ禍の名残の残る、2023年7月のことです。

②他人が怖かった。ひとりで生きた高校生活

私の高校生活は、ひとりでした。人の視線を恐れていました。学校で一言もしゃべらない日もたくさん。
自分なんて存在しない、自分のカタチなんてない。

そんな私の心が開いたのは、フィリピンの人々に対してでした。

高校の研修旅行でマニラに行き、現地の子どもたちと関わる機会がありました。人との関わりを恐れていた私にとって、現地の人の温かみは衝撃的でした。

スマホを構えただけで、近づいてくれる。笑顔で私を迎えてくれる。
高校生の私にとって、フィリピンは「ここにいていいんだ」と感じられる場所でした。

③またひとりで生きようとした

大学に入ると、様々な縁が重なり、人間関係に困ることは少なくなっていきました。いろんな人に必要とされて、いろんな人と語り合って…何となく、自分を取り戻すことができていました。

でも、ある日、「他人に自分を見せてはいけない」と思う出来事がありました。やっと人と関われるようになったのに、ここにいてはいけないと思うようになりました。

だからこそ、フィリピンに行きたかった。
人の温かみに触れて、見失いかけた自分のカタチを、確かめようとしたんだと思います。

2、実際に参加してみてどうでしたか?

①「なんとなく心地いい感じ」を大切にしようとしたセブでの授業

現地に渡航して、私は小学校3年生のクラスに入ります。私はすでに教育実習を終えた状態での参加でした。緊張は全くなく、「とにかく楽しむぞ」といった心持ちでした。

一回目の授業は、日本の文化を紹介する授業。日本のゆるキャラを紹介した後、それぞれ思い思いにセブの魅力が詰まったゆるキャラを考案し、描いていきます。

二回目の授業は、英語。比較級と最上級を用いて、自分の家にあるbiggestなものや、cutestなぬいぐるみなどを紹介します。セブの子どもたちは、素直な目で、実直に自分のゆるキャラをデザインしたり、一番いいものを紹介したりするんです。

でも、私には心苦しさがありました。

「子どもたちの自然な姿を出せていない」

私が与えた題材で、その中でしかこの子たちの姿は見ることができていない。

三回目の授業は、体育でした。日本の「じゃんけん列車」と「しっぽとり」をやりました。私の英語が伝わっておらず、全くルール通りにできません。でも、子どもたちははしゃいでいて、見たこともない笑顔で、走り回っていました。想定外の遊び方で楽しんでいる姿を見て、思わず私も、一緒に笑顔になっていました。

子どもたちが遊びに打ち込んでいた。子どもと一緒に私も楽しめた。
「なんとなく心地いい感じ」でした。

②ハッとさせられた”仲間”からの言葉

GTPで過ごす時間は授業だけではありません。授業準備や、授業後のリフレクション、現地文化の体験やショッピングなど様々です。

私が印象に残っているのはリフレクションです。授業の振り返りもさることながら、各自が事前に設定した「チャレンジ」を振り返っていきます。

私のチャレンジは、前項のタイトルでもある「なんとなく心地いい感じ」。言葉にならないけど、いい感じの状態をつくりたいと思っていました。そのためには、いろんなものとものの壁(教材と子どもの間にある壁や、教師と子どもの間にある壁)が溶けていくことが必要だと思っています。

私は三回目の授業で、その溶けた感覚を味わっていました。そんな状態で挑んだリフレクション。
スタッフとして一緒に渡航していたかいくんの一言

「しんちゃんはGTPの空間に溶けてる?」

はっとしました。
自分のことばかり、広い視野をもてずにいたこと、気付かぬうちに他のメンバーとの間に壁を作ってしまっていたことに気付かされました。

授業実践が終わり、対話を重ねる機会が増えました。自分がどんな人であるのかを開示できるか、相手のことをどれだけ受信できるか…これまで逃げていたことをやってみました。

最終日、完全ではないけど、もうちょっとセブにいたいと思えるくらい、関係性を溶かすことができたと、勝手に思っています。

3、GTPを終えて、これからどうしていきたいですか

①心地よさをつくれる人に

これからも教育者として、生きていこうと思います。自分のチャレンジだった「なんとなく心地いい感じ」を、子どもたちが感じることができる場をつくっていきたいし、自分も何をしたら心地よい感じを味わえるのかも、探究していきたいと思っています。

②チャレンジ”する”人から、チャレンジできる人”である”へ

自分がどんな人であるか開こうとしたからこそ、セブですてきな時間を過ごせました。何をするかばかりではなく、「どんな人であるか」をもう少し探究したいです。そうすれば、もっと人との関わりが上手くなれるのではないかなと思っています。

③「子どもは学ぼうと思った人から学ぶ」

この言葉は、脳科学者の養老孟司さんの言葉で、自分の中で大切にしている言葉です。
GTPに参加して、自分がどんな人であるのか、とても見直させられました。ということもあって、ずっと受験をしようとしていた今年の教員採用試験の受験を辞めました。もう数年は、ワクワクすることをしていきながら、自分がどう在りたいかを旅していきたいと思います。

そして、自分の姿を感じられるフィリピンにはたまに来て、その時の自分のカタチをチェックし続けたいなと思います。

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