「理想だけに縛られず、今あるものでベストを尽くす」− GTP卒業生・JICA海外協力隊・大和一輝さんインタビュー
しんや(GTP代表) おと (セブGTP リーダー):
今日は、Global Teacher Program(以下GTP)の卒業生で、現在はJICA海外協力隊としてソロモン諸島に派遣されている 大和一輝(やまと かずき)さん にお話を伺います!

GTPに参加したきっかけ
しんや:
まず、どうしてGTPに参加しようと思ったの?
かずき:
東京学芸大学で開催されたイベントで、偶然GTPの卒業生と出会ったのがきっかけでした。当時私は高校教師(世界史)を目指していて、学生の内に必ず海外を訪れたいと思っていました。GTPが「海外で授業をするプログラム」だと聞き、自分の興味とマッチしていると感じて参加を決めました。すぐに連絡を取って、上野で(GTP代表の)しんやさんと話したのを覚えています。
それまでは塾のバイトで子どもに勉強を教えてはいましたが、集団授業をするのも、海外で授業するのも初めて。ワクワクとドキドキが入り混じっていました。
初めての授業で大切にしたこと
おと:
実際にセブ島で授業をしたときはどうだった?
かずき:
ザパテラ小学校で、小学2年生に「繰り下がりのある3桁のひき算」を教えました。授業は3回と決まっていたので、一回一回をとことん大事にしました。英語力に自信がなかったこともあり、「語学以外でどう授業を成立させるか」に力を注ぎましたね。
スタッフの快晴さんからは「子どもたちの興味をひくために小道具や教材を工夫するといい」とアドバイスをいただき、他のメンバーからは準備の工夫をたくさん学びました。それらをヒントに教材を手作りし、実際の授業ではくまモンのぬいぐるみやお面も使わせてもらいました。
結果、英語が完璧じゃなくても、子どもたちに興味を持ってもらえる授業ができたと思っています。

GTPで得た学び
しんや:
その経験からどんなことを学んだ?
かずき:
一番大きかったのは、**「どんな環境下でも、今あるものを活かして授業をする」**という考え方です。準備時間や用意できる教材、そして自分の体力は無限ではありません。限りがある中で全力を尽くす。この学びをGTPで経験として得ることができ、 後に日本の小学校で働いたときも、そして今の協力隊の活動でも、この姿勢がすごく役立っています。
GTP後のキャリアと挑戦
しんや:
卒業後はどんな道を歩んだの?
かずき:
GTPを経て協力隊の説明会に参加し、試験を受けて合格しました。ただ、その直後にコロナ禍で派遣がストップしてしまって、国内待機を強いられることになりました。地元の小学校で臨時教員として働いている間、(セブGTPリーダーの)おとちゃんからTeach For Japanを紹介してもらい、フェローとして福岡県の小学校に赴任しました。そこで教員を3年間務めました。
おと:
そういえば、そんなこともあったね!
かずき:
その後、改めて協力隊の試験を受け直し、合格。国内研修を経て2025年からソロモン諸島に派遣されています。
ソロモン諸島での挑戦
おと:
今はどんな活動をしているの?
かずき:
ソロモンでは小学校で算数と体育の授業改善を担当しています。ここはセブ以上に、モノ・お金・人手が足りない環境です。だからこそ「その場で工夫する」というGTPで学んだ姿勢が生きています。
また、現地の言語はピジン語。まだ完璧には話せませんが、「できる範囲でベストを尽くす」気持ちで臨んでいます。教育環境も日本とは大きく異なり、目標とする活動ができないことも多いです。理想の教育像を追いかけることも大事ですが、無理をして自分が壊れてしまったら意味がありません。限られたリソースや時間の中でどうベストを尽くすか。これは今も自分の軸になっています。
ちなみに、同じBatchでGTPに参加した仲間がソロモンで同じ協力隊員として活動しています。非常に心強い存在ですし、活動への励みにもなっています。

これからの目標
しんや:
今後の夢や目標は?
かずき:
協力隊は大学時代からのマイルストーンでした。今はまず、この2年間にベストを尽くしたいと思っています。
自分の功績だけにフォーカスするのではなく、**「マラソンを一緒に走るように、現地の人を巻き込みながら教育環境をよくしていく」**ことを大切にしています。2年後にはソロモンを離れますが、その後のキャリアはまだ模索中です。でも、教育に関わり続けたい気持ちは変わりません。
GTPを目指す人へのメッセージ
しんや:
最後に、これからGTPに参加する若者にメッセージをお願いします!
かずき:
**「海外に行く完璧なタイミングは来ない」**と思います。私自身、協力隊に受かった直後にコロナで派遣が止まりました。条件が全部そろうのを待っていたら、いつまでも一歩を踏み出せません。
海外に挑戦して後悔することはまずないはずです。少しでも興味があるなら、ぜひ飛び込んでみてください!
編集後記
セブ島でのGTPで学んだ、全てのリソースが完璧ではない中でも「現地にあるものを工夫してベストを尽くす」。この考えが小学校での教育や、今のソロモン諸島での活動につながっていると聞いて、とても嬉しくなりました。これは彼の例だけではなく、あらゆる教育者に必要な考え方だと思います。
一輝さんのように、GTPを経て、様々な教育現場で活躍する卒業生がこれからも増えていくよう、私たちもベストを尽くしていきます!


