GTPセブ参加者体験談 関守陽大 大学院2年生〜Teacher Yotaの授業録~

 初めまして。岡山大学教職大学院2年生の関守陽大(せきもりようた)です。修士1年生の春休みにGTPに参加しました。大学院では、「批判的思考を育成する数学の授業デザイン」をテーマに日々研究に取り組んでいます。中学校・高校の数学の教員免許を持っており、来年度から高校の数学教員として働く予定です。

1、GTPへの参加を決めた理由

 GTPは「海外に行く」「授業の経験を積む」という自分の挑戦したいことを両立していると思ったからです。

 「海外に行く」に関して、私の出身高校には国際教養科があり、高校生のうちから海外に行く生徒や海外の大学に進学する生徒がいました。また、大学進学後に海外留学をしている高校の同期もいました。私はそんな彼らに憧れ、「自分も学生のうちに海外に行ってみたい」という思いを抱いていました。

 「授業の経験を積む」に関して、9月に大学院の実習があり、研究のデータを取るための授業をしました。しかし、授業が思うように進まなかったり、生徒の考えを上手く引き出せなかったりといった課題が見られました。ここから、研究のための授業以前に、そもそもの授業力を上げる必要性を感じ、授業の経験を積める機会を探していました。そんな時に、GTPの「海外で教育実習をする」という活動内容を知りました。このことをきっかけに、海外留学への漠然とした憧れと自身の授業力に対する課題意識が結びつき、プログラムへの参加を決めました。

2、実際に参加してみて

 学校を最初に訪問した際、生徒は私のことを"Teacher Yota"と呼んでくれました。自己紹介の後、私は宿題の連絡をするために、伝えたい内容をGoogle翻訳に入力して、子どもたちにそのまま話しました。しかし、うまく伝わりませんでした。そこで、自分の知っている単語で言い換えたり、担任の先生やメンバーの助けを借りたりして、なんとか伝えることができました。この経験から、英語は受験科目ではなく、コミュニケーションのツールであることを再確認しました。多くの単語や文法を知っているからこそ、目の前の相手に合わせた伝え方を選ぶことができます。翻訳ツールの発達した現代においても、英語を学ぶ意義はここにあるのではないでしょうか。

第1回の授業

 「インスタントラーメン」を題材に、食品ロス削減をテーマとした授業を行いました。メインアクティビティとして、自分の好きなインスタントラーメンのアレンジレシピを考える活動を位置付けました。まとめでは、身近なところから食品ロス削減に貢献できることを伝えました。私が見た限り、生徒は全員、自分の好きなインスタントラーメンのアレンジレシピを書くことができていました。私の知らないフィリピンのインスタントラーメンや食材を用いた個性豊かなレシピが出てきて、楽しい授業になったと感じています。

 子どもたちが意欲的に参加してくれたことが本当に嬉しく、自然と笑顔になれました。前日に得た学びや自分の英語力を踏まえ、身振り手振りを加えたり、スライドの内容を見直したりして授業に臨んだ結果、話している内容が伝わらないという場面はほとんど無かったと記憶しています。また、授業の前日に担任の先生と打ち合わせをした際に、「生徒には辛ラーメンが人気」という情報を得ました。それをもとに急遽、導入で辛ラーメンの画像を使い、“I love shin-ramen!”と言ったところ、非常に良い反応が得られ、興味を引くことができました。一方で、「身近なところから食品ロス削減に貢献できる」というメッセージが、やや伝わりにくかった点が課題として残りました。そのことを踏まえ、次回以降の授業では「授業で伝えたいメッセージをはっきり示すこと」を意識しました。

第2回の授業

 円グラフとパーセントの計算を扱いました。メインアクティビティとして、学校のコスプレパーティーで着る衣装についてその場でアンケートを取り、私がExcelで作る円グラフをもとに一番割合の大きい衣装を選んだ人数を求める活動を行いました。授業で伝えるメッセージは「円グラフを用いると賢い選択ができる」ということでした。

 メインアクティビティでは、私自身が行ったコスプレの写真をアンケートの選択肢に用いました。その結果、生徒の興味を引き、授業に巻き込むことができたと感じています。特に、ヤンキーのコスプレの写真を見せた際には、「マイキー?」と聞いてくる生徒もいました。生徒に目を伏せてもらい、着たい衣装に手を挙げてもらった結果、ヤンキーのコスプレが一番人気でした。次に、円グラフに示された割合からそれを選んだ人数を計算しました。その上で、実際に手を挙げた人数と一致するかを確かめました。それらが一致した時、私も生徒と一緒に盛り上がったことを覚えています。この活動を通じて、テキストの内容を少し身近に感じてもらえたのではないかと思っています。

第3回の授業

 起こりやすさと確率を扱いました。メインアクティビティとして、祭りの屋台で参加するゲームを選ぶ場面を設定し、「当たる確率は高いが賞金の低いゲーム」と「賞金は高いが当たる確率の低いゲーム」のどちらを選ぶかを理由とともに考えさせました。授業でのメッセージは「確率を考えることで賢い選択ができる、損失を避けられる」ということでした。メインアクティビティに関して、最初は意見が分かれていましたが、一人の生徒が「確率が大きいこと」を理由に前者を選んでいたことを取り上げ、授業のメッセージに繋げました。

第2,3回の授業を総括して

 私自身のコスプレや祭りのゲームを題材に問題を作成したことで、生徒の興味を引き、彼らを巻き込んだ楽しい授業を行うことができました。また、「伝えたいメッセージをはっきり示す」ことを意識した結果、授業全体にまとまりが生まれました。

 ただし、本来、このようなメッセージは生徒の発言をもとに導き出すことが理想だと思っています。例えば、第2回目の授業であれば、「円グラフの良さは何か?」と導入で問い、まとめで授業を通して考えたことを生徒に書かせ、それらを拾い上げながらまとめにつなげることもできたはずです。私の英語力や授業力の問題もあり、生徒の意見を十分に授業に生かすことができなかった点は今後の課題です。

3、GTPを終えてからの取り組み

 現在、大学院で研究を行う傍ら、高校で非常勤講師として数学Aを教えています。過去の授業では、生徒の興味を引くために、集合をクラスに例えて説明したり、生徒に実際にさいころを振らせ、「1の目が出る確率は本当に1/6なのか」と問いかけたりしました。また、あえて誤答を示して違いを考えさせたり、問題を作って解かせたりする活動をしたことがあります。さらに、普段の授業から、生徒が答える場面をなるべく多く設定したり、隣同士で考えを確認させたりすることも意識しています。しかし、現場では決められた範囲を限られた期間で終える必要があり、解説中心の授業になってしまう時もあります。

 授業づくりでは、専用のノートを作り、板書計画や時間配分などを書き、授業後には改善点を書き加えています。このように授業を見直し、改善することを大切にし、少しでも良い授業ができるように努めています

4、次への一歩

 現在は「生徒が自ら問いを持つこと」を核に批判的思考を定義し、授業デザインとその効果の分析を行っています。そのため、今後は生徒の意見だけではなく、問いを引き出し、その追究をともに行うような授業スタイルを確立していきたいです。

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